2003.2.11〜
藤生崇則
takanori@fujiu.gr.jp

携帯テレビ電話ビジネス サービスイメージ (シナリオ)


1.テレビ電話サービス型

相互に情報を送受信する形態。客・サービス提供者の区別はない。CtoC的。

(1)テレビ電話お見舞い

病院からお見舞いをしたい人(見舞い人)の自宅へ、携帯テレビ電話端末が宅配される
同封の説明書に従い、見舞い人が病院へ電話(音声)する。
見舞人 「もしもし。デンデン病院さんですか。そちらに入院している鈴木花子の身内の者ですが。携帯テレビ電話が届きましたので・・・。」
病院 「わかりました。ではこちらのテレビ電話の準備をしますので、電話を切ってお待ちください。10分ほどしたらこちらからおかけしますので、そのときはテレビ電話モードで応答してください。応答の仕方は同封の説明書に書かれていますが、わかりますか?」
見舞人 「ええ、わかります。ではよろしくお願いします。」
病院側は電話を切り、患者を院内のテレビ電話室へ連れてくる
テレビ電話室のPCを立ち上げ、PC-テレビ電話のアプリケーションを立ち上げる
PC-テレビ電話から先ほどの見舞い人の携帯テレビ電話へテレビ電話をかける
見舞い人がテレビ電話モードで応答し、テレビ電話通話を開始する
見舞い人宅には患者の妹と患者の幼い子供がいる。子供は聴覚障害者。
見舞人 「お姉さん、具合はどう?」
患者 「ありがとう。でも私はもうだめよ。」
見舞人 「何言ってんのよ。そうそう、今日はタカシ君もきているの」
患者 「え!」
タカシ、手話で患者に「おかあさん、がんばってね」と伝える
患者、涙。
患者、画面を指差しながら先生のほうを向く
患者 「先生!ほら、タカシがね、お母さんガンバレって。私のために新しい手話を覚えてくれたのよ!」
先生、うなずきながらニコニコ。
患者、再び画面に目を向け、手話で「私、頑張る」を子供に伝える

(注1)携帯テレビ電話からPCへの通信において、PCが立ち上がっていないと通信ができないという不便さがある。その不便さの解消のために、まず音声電話をかけ、その後PCから携帯テレビ電話へテレビ電話モードで電話をかけるというオペレーションの流れにする。この方法ならば、不慣れな人(見舞い人)に複雑な発信操作をさせないですむ。また、発信に関するトラブルが不慣れな人の側で発生する可能性(発信したけどつながらなくてなんかわけのわからないメッセージが出た等)を極力少なくすることにもなる。

(注2)このビジネスモデルは、病院が入院患者へのサービスとして提供する形である。病院としては、他との差別化になる。病院は、産婦人科なども適合するだろう。祖父母側に携帯テレビ電話端末を宅配しておく。初孫の場合など、祖父母のニーズは強いだろう。2人目からは割引、とすると、病院側としても顧客維持のツールになるだろう。


【KeyWord】
福祉分野、携帯テレビ電話端末宅配、手話通話

2.サポートセンターサービス型

 主に、客が携帯テレビ電話で撮影し情報を送信する。サービス提供側(サポートセンタ)にはPC-テレビ電話があり、それで情報を受け取り、それによってサービスを提供する形態。情報の流れはCtoB的。
サポートセンタが有料サービスを提供している場合、その利用代金は通信会社による料金代行徴収が適すると思われる。

(1)パソコン修理サポートサービス

パソコンが故障して、ユーザがメーカのサポートセンタへ電話(音声)する。
音声でやり取りするが、なかなからちがあかない。
サポート 「では、テレビ電話でのサポートもできますがいかがいたしますか?」
ユーザ 「テレビ電話を持ってないけど、そのサポートを受けることはできるの?」
サポート 「では、これからバイク便で携帯テレビ電話をお届けしますので、1時間ほどお持ちください」
1時間後、ユーザ宅に携帯テレビ電話端末が届く。
ユーザは同封の説明書に従って、サポートセンターへテレビ電話をかける。(注3)
ユーザには携帯テレビ電話、サポートセンターにはPC-テレビ電話がある。
ユーザ 「あ、先ほどの者ですが、携帯テレビ電話が着きました。」
サポート 「では、そのカメラでパソコンの画面を写してください。」
ユーザがパソコンの画面を写す
サポート 「なるほど。アイコン定義ファイルが壊れているようですね。ではその左上の窓の絵のアイコンをダブルクリックして・・・。いや、その左のです。そうそう、それです。はい。エラーメッセージが出ましたね。そのメッセージをカメラで写していただけますか。はい、わかりました。これは再インストールの必要がありますね。大丈夫です。このテレビ電話をとおして全てご案内しますから。ご安心ください」
パソコンが直ってから
ユーザ 「直ってよかった!しかしこの携帯テレビ電話サポートはいいですね。ところで、この携帯テレビ電話も気に入ったけど、買っちゃうことはできるの?個人用として使うこともできるんでしょ?」
サポート 「ありがとうございます。では、同封の名義変更の書類をご記入いただき、こちらまで郵送していただければ、お客様個人の携帯テレビ電話としてお使いいただくことができます。後程マニュアルや添付品をお送りします。なお、通話料はプリペイド式なので、お近くのコンビニでプリペイドカードをご購入していただけば、ずっとお使いいただけます。」
ユーザ 「私、車椅子なんであまり出かけられないんだけど、オンラインでもプリペイド購入できますか?」
サポート 「ええ、大丈夫です。」

(注3)前述のテレビ電話お見舞いと同様、この場合も宅配便で携帯テレビ電話が届けられるので、ユーザは携帯テレビ電話の操作に不慣れである。そのような不慣れな人にいきなりテレビ電話モードでかけさせるのは問題かもしれない。しかし、テレビ電話お見舞いとは異なり、サポートセンター側のPCは常に立ち上がっていること、およびサポートセンターを利用してPCを自分で直そうとするぐらいの人ならば多少複雑な操作やエラーメッセージが出ても許容してもらえる、と思われることから、このオペレーションの流れでも大丈夫だろう。

【KeyWord】
ユーザー層が一致(パソコン利用者層)、メーカーサポートセンター、携帯テレビ電話端末宅配、買取制度、プリペイド携帯


(2)視覚障害者サポートサービス

目の見えない人が歩道に立っている。
彼は携帯テレビ電話でサポートセンターへテレビ電話をし、周りの状況を見せる。
サポートセンタにはPC-テレビ電話がある。
視覚障害者 「初めての街なので、サポートお願いできますか。」
サポート 「わかりました。利用料金は電話料金と合わせて請求させていただいてよろしいですか?」
視覚障害者 「はい」
サポート 「ありがとうございます。少々お待ちください。ただいまあなたの位置を確認します・・・。」
携帯テレビ電話のGPS情報から位置を特定し、地図が表示される。
サポート 「新宿駅新南口ですね。前方をカメラで写していただけますか?あ、出口のほうを向いているところですね。それで、どちらまで行かれますか」
視覚障害者 「デンデン病院までお願いします」
サポート 「わかりました。」
サポートセンターのPCで現在地から目的地までのルート検索をする。
条件として「視覚障害」を入れる。
通常ルートと安全ルートの2ルートが地図上に表示される。
サポート 「デンデン病院までは通常ルートと安全ルートがありますが、どちらをご案内しましょうか。」
視覚障害者 「安全ルートでお願いしたいのですが、何分ぐらいかかりますか。」
サポート 「安全ルートでは15分ぐらいになります。」
視覚障害者 「先方へ電話をかけておきたいのですが、できますか。」
サポート 「はい、このままおかけすることができます。音声ダイヤルができますので、ピーと鳴ったら番号を言ってください。通話が終わりましたら、電話を切らずにそのままお持ちください。」
「ピー!」。
視覚障害者 「××××―××××−××××」・・・「あ、○○さん?今ね、新宿駅で、・・・」
相手が電話を切る。
サポート 「終わりましたか?では、そこから右を向いてまっすぐ進み、点字ブロックの上を行ってください。」
サポート 「あ、自転車が歩道の真中にあるので気をつけて。右へよけてください。」
サポート 「赤信号です。しばらく止まって待ちましょう」
視覚障害者 「いや、本当に助かります。いままで知らない街へは怖くて一人では行けなかったんですよ。このサービスを利用するようになってからずいぶん行動範囲が広がりました。友達もいっぱいできましたよ。」
サポート 「ご利用ありがとうございます。お役に立てて私達も嬉しいです。あ、そろそろ信号が変わりますよ」

【KeyWord】
福祉分野、視覚障害者サポートセンター、ネクタイピンカメラ(ネクタイピン状の小型カメラを外部カメラとして接続できる)、利用料金徴収代行、GPS位置情報、安全経路探索、電話中継、音声ダイヤル



(3)外国人サポートサービス(注4)

日本で、外国人青年が木にもたれてウトウトしている。
老人がゆっくりと石段を登ってやってくる。
老人が青年を見て驚く。いきなり老人が怒り出し、杖を振り回して青年のほうに走って来る。
青年は気づいて驚いて逃げ出す
以下、英語での会話
外人青年 「ヘルプミー!ヘルプミー!一体何なんだ」
逃げながらサポートセンターへテレビ電話をする
外人青年 「サポートセンターですか、昼寝していたらいきなり老人に襲われたんですけど!」
サポート 「いったいどうしたんですか。周りを写してもらえますか?」
周りを写す。神社と御神木が写る。
サポート 「あ、あなたはあの木のところで寝ていたんですね。」
外人青年 「そう、そうなんですけどね・・・。」
サポート 「その木は御神木といって、とても神聖な木なんです。そこに寄りかかっていたので、おじいさんが怒っているんですよ。」
外人青年 「え〜!そうなんですか。じゃあ、どうすればいいんですか。」
サポート 「まず、ゴメンナサイと謝るんです。」
外人青年 「ゴメ、ゴムム、・・??」
サポート 「今文字を送ります」
携帯テレビ電話の画面にGO-ME-N-NA-SA-Iの文字が表示される
外人青年 「あ、GO-ME-N-NA-SA-I」
老人、頭上で振り回していた杖を止める。
老人 「ん?この外人、自分が悪いことしたことがわかったのか」
サポート 「あやまる時は上半身を前に折るんですよ。今映像を送ります」
携帯テレビ電話の画面にお辞儀をしているアニメーションが表示される
青年、お辞儀をしながら
外人青年 「GO-ME-N-NA-SA-I」
老人 「おお、外人にしては謝り方を知っているじゃないか」
老人、振り上げていた杖をゆっくり降ろす
老人 「ああ、もうよいよい。今度からは気をつけろよ。」
老人立ち去る
青年、ほっととしてサポートセンターに
外人青年 「いゃぁ、助かったよ。ありがとう」

(注4)外国人サポートサービスや後述の海外旅行者サポートサービスは、旅行会社が旅行者に携帯テレビ電話をサポートセンタ利用とパックにして貸し出し、旅行中安心サービスとして提供する、というビジネスモデルも考えられる。 


【KeyWord】
国際分野、通訳・翻訳サポートセンター、テレビ電話中の文字送信、テレビ電話中の動画送信、・日本文化データベース(お辞儀の仕方のアニメ等)



(4)海外旅行者サポートサービス(注4)

海外旅行者が外国語で書かれた道案内の標識の前で迷っている。
旅行者は、携帯テレビ電話でサポートセンターへテレビ電話をする。
旅行者 「いや〜、道に迷っちまったよ。デンデンシティへ行きたいんだが、この標識のどれの方へ行きゃあいいんだい?」
サポート 「そうですね。それならその右の道ですね。」
旅行者 「おお、そうか。ありがとよ。ところで、レストランってどういう字を書くんだい?」
サポート 「少々お待ちください・・・。」
サポートセンター、マジックで紙に書き、それをカメラに向ける
旅行者 「おお、ありがとよ。ちょっとそのまま。今画面撮りするから。」
ボタンを押して画面撮り保存
旅行者 「ありがとさん、助かったよ。」
サポート 「ご利用ありがとうございます」

【KeyWord】
国際分野、国際ローミング(または現地サポートセンタ)、通訳・翻訳サポートセンタ、画面撮り保存



3.リモートパーソンサービス型

主に、サービス提供者が携帯テレビ電話で撮影し情報を送信する。客側にはPC-テレビ電話があり、それで情報を受け取る形態。サービス提供者は、リモートパーソンとして客の指示通りに動いて撮影する。情報の流れはBtoC。 


(1)バーチャルビューサービス

車椅子に乗った障害者が全天ドームの中にいる。
広い野原に、携帯テレビ電話端末を持っている人(リモートパーソン)がいる。
リモートパーソンの携帯テレビ電話端末のカメラには魚眼レンズが付けられており、360°の風景を撮っている。
障害者のいる全天ドームには、携帯テレビ電話端末で撮っている映像がPC−テレビ電話とプロジェクタを介して投影され、臨場感のある風景が映し出されている。
リモート 「どうですか?映っていますか?」
障害者 「まるで野原にいるみたい!ねえ、そこで走ってみて!」
障害者 「わぁ!すごい!一度野原を走ってみたかったの。もう一生だめだと諦めていたの!ねえ、その右のほうへ行ってみて。あ、神社なの?長い階段ねぇ。ねぇ、登ってみて!お参りしたいの。神様にお礼を言いたい・・・。」

(注5)この他、登山、海中、スピードのある乗り物、ショッピング、不動産物件チェックなどが考えられる。利用者も障害者だけでなく、老人、子育て中の主婦なども考えられる。

【KeyWord】
福祉分野、リモートパーソン、バーチャルレクレーション、360°風景撮影、全天ドーム(内側が半球状スクリーン)、全天ドーム用投影プロジェクタ


(2)思い出再会サービス

老人がベッドに横たわっている。遠くを見つめ、ぼんやりしている。暗い顔。
独り言
老人 「ああ、死ぬ前にもう一度、あの場所を訪れてみたいものだ・・・。」
何日かして息子がPC-テレビ電話を持ち込んできて
息子 「お父さん、お父さんがいつも言っていたあの場所が見られるよ」
老人 「うん?」
リモートパーソンの持っている携帯テレビ電話からの映像がPC-テレビ電話に映される。
昔の激戦地。
老人 「おぉ!これは・・・。そう、ここだ、ここだ。あの場所だ。」
リモート 「どこへでも行きますよ。おっしゃってください」
老人 「そう、その丘の右の方へ行ってくれ。そう、その木のところだ。そこに傷を負ったあいつを置いて俺は突撃しちまったんだ。俺のほうが生き残っちまうとはなぁ。すまなかった。すまなかった・・・。」
老人、布団を掴んで握り締め、涙を流す。
リモートパーソンが木の根元にそっと花束を置く
老人 「ありがとうよ。ありがとう・・・・。」
老人は画面に向かって手を合わせる。

何日かして、老人の葬式の場面。会葬客の会話
会葬客A 「仏さん、本当に穏やかな死に顔でしたね。」
会葬客B 「本当。あんなに満ち足りた死に顔なんて今まで見たことがなかったわ。よっぽど悔いを残さず死ねたのね。あ〜あ。私も死ぬ時はああいったいい顔でいたいな。」
会葬客A 「でもね。私が1ヶ月前にお見舞いに行ったときは遠くを見つめて暗い顔をして『死ぬ前に一度、またあそこへ行きたい』とかつぶやいていたのよ。でもあれからどこへも行けるはずないのに・・・。」
会話している2人の後ろを外国人青年が通って焼香に来る
外国人青年の胸にユネスコのバッジ。
外国人青年がきちんと作法にのっとって焼香する
外人青年 「あなたのおかげで日本文化をもっと深く勉強したいと思うようになりました」
棺の上に老人愛用の杖。

【KeyWord】
福祉分野、ターミナルケア、リモートパーソン

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