携帯テレビ電話実験レポート


このページは、携帯テレビ電話ビジネスの検討のために、携帯テレビ電話の様々な使い方を実際に
行ってみた結果をレポートしたものです。実験については、随時追加していきます。

※用語等、詳細は携帯テレビ電話ビジネス サービスイメージ (シナリオ)を参照してください

実験機種:NTTドコモ PHS P751v (Lookwaik)×2台
       NTT東日本 デュアルモードTV電話機 Moppet

1.テレビ電話サービス型

テーマ 手話通信
概要 携帯テレビ電話を通じて手話で会話することが実際に可能であるか、使い勝手は良いかを、実際に手話を日常的に使っている人に実験してもらって検証する。
日時 2003年3月28日
場所 【発信・受信】東京都新宿区 東京オペラシティタワー
使用機種 【発信・受信】P751v×2台
確認事項 ・画質は充分か。手や指を写した時に指1本1本が見えるか。
・速度は充分か。手話のスピードに携帯テレビ電話での通信速度がついて来れるか
・ピントの合う位置(距離、被写界深度)は適切か。手話を写す場合は顔を写す時よりも遠い位置になる。
・画角は適切か。上半身(手話で手が動く範囲)を丸々写せるか。
・携帯テレビ電話を片手に持って手話ができるか?両手を使って手話をするならばどうすればよいか
実験結果 ・携帯テレビ電話を通しての手話通信は可能であったが、ゆっくり動かすなどの工夫が必要。
 受信側ではコマ送り的な表示であり、速く動かすと手話の内容がわからなくなるので、ゆっくりと手話をする必要があった。2秒で1語程度と思われる。この速度は通常手話で会話している人にとっては遅いと感じる速度であった。また、映像がブレていてわからない、というのもあった。画面がモザイク状になったときもあった。
 さらに、手話の場合は顔だけでなく手の動く広い範囲を写さなければならないので、必然的に受信側の画像は小さくなってしまった。携帯テレビ電話の画面では見えないことはないが、指先など認識しづらかった。
 ピントは広い範囲で合っており、それほど問題にはならなかった。

・携帯テレビ電話を手で持って手話通信するのは困難
 携帯テレビ電話を手で持って通信したら、腕が疲れてしまった。手話の場合、顔だけでなく上下左右の手の動く範囲を写そうとすると、カメラを持った腕をめいっぱい伸ばして遠くから自分を写さざるをえなかった。この格好は長時間やっていられなかった。
 さらに、手話は片手でもできないことはないが、表現が限定されてしまう。手話を両手で行う場合、携帯テレビ電話をどこかに置くか、吊るすなどする必要があった。実験に用いた機種は2つ折りタイプなので、机上に置くことができた。また、ストラップを工夫して吊り下げることもできた。
 また、これは機種依存の問題かもしれないが、端末操作をしないと30秒ほどで画面が暗く(節電モード)なってしまうのがわずらわしかった。
手話通話を実際にやってみる 向かい合って実物と映像を比較しながら実験 吊るしてみたところ

考察  速度については、受信側画像がコマ送りになるのは撮影コマ数(フレーム数)の問題だろう。しかし設定をもっと調整すれば(速度優先設定とか)、速い手話でも伝えられるのかも知れない。ただし、受信側の画像がぶれるというのもあり、フレーム数の問題だけではなさそうだ。いずれにしろ、より速い速度(ビデオなみの30フレーム/秒)に対応することが望まれるが、単にフレーム数を増やすだけではなく、通信速度の向上も行われなければならないだろう。今回実験に利用したのはPHSであり、通信速度が32Kまたは64Kである。FOMAであればまた条件が異なるので、この問題は解決されるかもしれない。
 画角・画質については、手話は広い範囲を写さなければならず、広角レンズの機種が望まれる。ただし、その場合は画像が小さくなってしまい、受信側が携帯テレビ電話の小さな画面では認識しづらい。受信側は大きな画面であることが望まれる。なお、画面が大きくなるに伴い、画質向上が必要になるだろう。
 端末の形状については、どこかに置けるまたは吊り下げられるような形であることが望まれる。またはそのように設置できる補助具が必要である。
 今回、厳密な測定は行っていないので、具体的にどの程度までの速度や画角、画面の大きさが適するのかは今後の実験のテーマになるが、結論として、実際に手話を日常的に行っている人に使ってもらったが、使えないことはないというのは確認できた。ただし、一般的に使うにはもう少し調整や改善が必要だろう。また、このような携帯テレビ電話での手話通話が普及するかどうかはもっと多くの人の意見を集めてみないとわからないので、これも今後のテーマである。
課題 ・撮影および通信速度向上
・大画面化(それに伴う画質向上)
・机上におけるまたは吊り下げられる形状の端末または補助具の開発
・テレビ電話通信中は画面照明を維持


2.サポートセンターサービス型

テーマ 視覚障害者のサポート
概要 目隠しをした人(視覚障害のある利用者を想定)が、階段を降りる。このとき、この目隠しした人は携帯テレビ電話で周囲を撮影し、サポートする人へ映像を送信する。サポートする人はその映像を見ながら目隠しをした人へ指示をし、階段を降りるのをサポートする。
日時 2003年3月9日
場所 【発信・受信】 埼玉県さいたま市 デパート階段
使用機種 【発信(利用者側)】P751v  【受信(サポートセンター側)】P751v
確認事項 ・目隠しした人は携帯テレビ電話からの指示だけで安全に安心して歩行できるか
・サポートする人は、携帯テレビ電話からの情報だけで目隠しした人を誘導することができるか
実験結果 ・目隠しした人は無事に階段を降りることができた。しかし、カメラでの写し方にコツがいった。前方全体と自分の足元を写す必要があった。その両方を写さないと、サポートすることが難しかった。
・蛍光灯の入っている看板のところでは大きなノイズが入り、通信困難になり、誘導ができなくなった。
考察 ・サポートする人が目隠しをした人を安全に誘導するには、目隠しした人は前方全体と自分の足元の両方を撮ることが必要である。今回の実験では前方と足元を交互に写していたが、このためには2つのカメラを使うか、広角レンズを使うようにすれば楽だろう。または、足元は杖に任せて、携帯テレビ電話では前景を撮影する、としても良いかもしれない。将来的には、イヤホン型、ヘッドフォン型またはメガネ型の携帯テレビ電話(カメラは付いているがディスプレイ無し)が開発され、写したい方向に顔を向ければ写るようであればよりよいだろう。
・看板に使われている蛍光灯が発する電磁波など、机上では想定しなかった障害物(携帯テレビ電話での通信にとっての障害物)が実際にはあることがわかった。
課題 ・広角または前景と足元の両方を写せるカメラまたはレンズの開発
・イヤホン型、・・・等のディスプレイ無しの携帯テレビ電話端末の開発
・電磁波等の障害物への対策


テーマ パソコン修理サポート
概要 パソコンユーザ(利用者側)は、パソコンの画面を携帯テレビ電話で写してサポートする人に見せる。サポートする人はこの映像を見て判断し、利用者に指示を出す。
日時 2003年3月1日
場所 【発信・受信】東京都中央区 事務所
使用機種 【発信(利用者側)】P751v  【受信(サポートセンター側)】FOMA
確認事項 ・画面の文字まで読めるか
・サポートする側は携帯テレビ電話経由の情報で的確なサポートができるか
実験結果 ・画面上の文字を写すためには、携帯テレビ電話のカメラを画面から2〜3cmのところまで近づかなければならかった。
・この状態では、利用者は携帯テレビ電話の陰で画面が見えなくなってしまった。
・このように画面に近づけた場合、受信側では画面全体の様子がわからないため、指示がしづらくなった。
  
文字が読めるように写すには、画面にカメラをかなり近づけなければならない
考察 ・このサービスは、現状では実用的とはいえない。画面上の文字を写すためには、携帯テレビ電話のカメラを画面に触れるほど近づかなければ書かれている文字が読めなかった。しかしこのようにすると、利用者は携帯テレビ電話の陰で画面が見えなくなってしまう。これでは実際に使うことができない。
・さらに、このように画面に近づけた場合、受信側では画面全体の様子がわからないため、指示がしづらくなる。もう少し遠くから写しても文字がわかるような高解像度が望まれる。
課題 ・カメラの高解像度化
・望遠またはマクロ撮影機能(離れているところからでも対象を大きく写せる)


3.リモートパーソンサービス型

テーマ リモート購入サポート
概要 利用者が会場に来ることができない場合、現地にいる人(リモートパーソン)が現地の店で売っている商品を携帯テレビ電話を通して見せながら、利用者が欲しいものを購入することをサポートする。
日時 2002年10月5日
場所 【発信】東京都千代田区 日比谷公園 バザー会場  【受信】東京都渋谷区
使用機種 【発信(リモートパーソン側)】P751v  【受信(利用者側)】P751v
確認事項 ・携帯テレビ電話を通して商品購入できるか
・携帯テレビ電話では商品がどの程度見えるか
・利用者からの指示どおりにリモートパーソン(売る側)は動けるか
実験結果 ・15分程度で合計約4,000円の商品を購入してもらった。
・リモートパーソンは利用者側の指示に従って利用者の見たい商品を見せることができ、利用者も納得して購入した。
・その直後にメールで注文した商品の写真を送り、注文確認を行った。

商品を写し、説明をする 利用者の指示に従い、利用者が見たい商品をじっくりと見せる 注文した商品の写真を撮影する 撮影した写真。この写真をこの場で注文確認メールに添付して送信する
考察 ・インタラクティブに会話をしながら商品を選べるという点は、商品を買う側も売る側も非常に良かったという評価だった。利用者は、映像そのものによる情報よりも、商品を見せながらの売る側の解説によって購入したという感がある。
・利用者から、商品が分かりにくいとの意見があった。受信側での画面がもっと大きいほうがわかりやすいとの意見であった。
・今回の実験では、携帯テレビ電話を通して注文を受けた直後、その商品をその場で写真を撮ってメールに添付し、そのメールで注文意思確認をとった。携帯テレビ電話という口頭での注文であっても、メールと組み合わせることによって文書化され、確実になる。このように、携帯テレビ電話にメール機能がついているのはその後の作業も容易かつ迅速・確実に行えるので便利である。もっとも、テレビ電話での会話を録画/録音するようにすれば(そのような機能があれば)、取引の証拠を記録できるので、このような確認はわざわざ行わなくても良いかもしれない。
課題 ・高解像度化
・受信側の大画面化


テーマ イベント擬似体験
概要 イベント会場に来ることができない人に対して、現地にいる人が現地の様子をその人の指示に従って見せる。
日時 2002年11月14日
場所 【発信】東京都 文京区  【受信】東京都 港区
使用機種 【発信(リモートパーソン側)】P751v  【受信(利用者側)】Moppet
確認事項 ・利用者はその会場にいるような疑似体験をすることができるか
・利用者の指示に従って利用者の見たいものを撮って見せることができるか。
・利用者はそれで満足できるか。
実験結果 ・会場の様子はほとんど見えなかった。スポットライトが当たっているあたりが、白い塊が写っているという程度だった。このため、利用者は臨場感を感じることはできなかった。
・会場の音楽はよく聞こえた
・利用者からの指示によってリモートパーソンがカメラの向きを変えるなどのオペレーションはできた。(ただ、会場の騒音のため、聞きとりにくい時もあった。マイク&ヘッドフォンを使用していたが、それでも聞き取りづらかった)
・利用者の感想としては、不満とのことだった。
固定テレビ電話機Moppetでの受信 会場全体が明るければなんとなくわかるが・・・。 ステージを写したところ。白い塊があるだけで、不鮮明。

考察 ・携帯テレビ電話のカメラ性能が低い。このカメラでは遠い対象物や小さな対象物、または暗い中に強いスポットライトが当たっているような明度の差のある場面ではうまく撮れず、受信側ではほとんど見えない。また、暗い場面では色の再現性能も低下するようだ。
課題 ・望遠カメラ機能装備
・解像度向上
・明暗差の激しい場面への対応


テーマ 展示会擬似見学
概要 会場に来ることができない人に対して、現地にいる人が現地の様子をその人の指示に従って見せる。
日時 2002年12月5日
場所 【発信】東京都 千代田区 東京国際フォーラム 【受信】東京都 港区
使用機種 【発信(リモートパーソン側)】P751v  【受信(利用者側)】Moppet
確認事項 ・利用者はその会場に行かなくても充分な情報を入手することができるか
・利用者の指示に従って利用者の見たいものを撮って見せることができるか。
・利用者はそれで満足できるか。
実験結果 ・会場内が明るかったため、展示品などよく見えた
・疑似体験とまでは行かなかったが、会場の雰囲気や何があるのか、は把握することはできた
・文字など細かいものを見たり読んだりするのは難しかった
・利用者の指示によって利用者が見たいものを見せることはできた。ただし、会場の雑音で会話が聞き取れない時もあった。(マイク&ヘッドフォンを使用していたが、それでも聞き取りづらかった)
・その場の説明員に携帯テレビ電話を渡し、説明員から利用者に直接説明してもらうことも行った
考察 ・機器構成としては「イベント疑似体験」と同じだが、展示会会場では照明があったため、展示品を写し、何があるかを見せることはできた。しかし、細かい部分は鮮明に撮ることはできず、結局実際に展示会に行かないとわからないとなった。
・携帯テレビ電話で写すことで完結するのではなく、説明員への仲介、または利用者の興味のある展示物についての 資料収集などのサービスとして提示するのが良いかもしれない。
課題 ・高解像度化
・会場雑音の中でも聞き取れるような対策


テーマ 旅行擬似体験
概要 ・旅行に行くことができない人に対して、現地にいる人が現地の様子をその人の指示に従って見せることで、旅行気分を味わってもらう。
日時 2002年8月24日
場所 【発信側】 山梨県 清里  【着信側】 埼玉県
使用機種 【発信(リモートパーソン側)】P751v  【受信(利用者側)】P751v
確認事項 ・利用者はその場所にいるような疑似体験をすることができるか。
・利用者の指示に従って利用者の見たいものを撮って見せることができるか。
・利用者はそれで満足できるか。
実験結果 ・PHSの通話範囲外のため、通信不可。
考察 ・このサービスをビジネスとして提供するには、利用者が要望するその場所で電波が届かないというリスクがある。特に自然の中の旅行地は通話範囲外の場合が多いと考えられる。
課題 ・通話範囲の拡大


テーマ くじのリモート購入
概要 ・遠方のくじファンのために、くじ売り場でスクラッチくじを購入し、携帯テレビ電話で写しながら、本人に代わってスクラッチを削る。
日時 2003年4月16日
場所 【発信側】 埼玉県  【着信側】 埼玉県
使用機種 【発信(リモートパーソン側)】P751v  【受信(利用者側)】P751v
確認事項 ・利用者は自分がくじを買ってスクラッチを削る時のような興奮を体験することができるか。
・利用者の指示に従って購入からスクラッチ削り・当りはずれ確認までをスムーズに見せることができるか。
・利用者からくじ代○○円(当りはずれに関わらず)、当たったら当選金額の1割もらう、という条件では受け入れられるか
・利用者はそれで満足できるか。
実験結果 ・スクラッチを削る前に代金交渉し、1枚200円、当たったら1割ということで受け入れられた
・3枚用意したうちの1枚を利用者が選択して、リモートパーソンがスクラッチを削った。その結果はハズレだったが、かなり楽しめたとの意見だった。
・15cmぐらいの距離ではくじに書かれている文字は見えなかった。カメラに接触するくらいに近づけないとわからなかった。
 
スクラッチを削っているところを携帯テレビ電話で中継

考察 ・利用者が興奮して楽しめるかどうかということは、携帯テレビ電話の機能というよりはリモートパーソンのエンターテイメントの才能に依存する。ただし、文字が見えないなどがあり、この点は興ざめする。
・ビジネスとして、くじ代+当たったら1割で採算ベースに乗るかが問題。これは収入が安定しないので、単独ビジネスではなく、広報宣伝として顧客サービスの位置付けで行ったほうが良いかもしれない
・この方法が法的に問題がないか(のみ行為にならないか)、確認する必要がある。
課題 ・文字が読めるぐらいの解像度
・両手を離して置いても写すことができる形状の端末または補助具の開発
・リモートパーソンのエンターテイメントスキル



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